このせんべい、山陰に住んでいる方ならみなさん一度は見たことがあるのではないでしょうか。
山陰のスーパーでは必ずと言っていいほど販売しているので、島根県で生まれ育った私にとっては、子供の頃からよく目にする身近なお菓子です。
そんな山陰ではなじみ深いお菓子を100年以上も前から作り続ける老舗の松崎製菓さんにお伺いし、作り手の想いを取材してきました。
松崎製菓とは
創業は大正7年。島根県東出雲町にあるせんべい専門のお菓子製造を行う会社で、現在の社長は三代目です。主力商品の「蜂蜜ふらい」をはじめ、松崎製菓さんのせんべいは全国菓子大博覧会で何度も賞を受賞しています。また、既存の商品だけでなく遠く離れた観光地とのタイアップや地元企業とのコラボ商品も多数存在します。
インタビューイー:松崎 成寿専務
地元企業に勤めたあと、約20年前に父、松崎 光夫さんの経営する松崎製菓に入社。一足先に入社していた弟とともに、昔ながらの商品を大切にしながら新商品開発も行った。
-私は山陰出身で、松崎製菓のせんべいを見ると懐かしい気持ちになります。今あるお菓子はいつ頃から販売しているのでしょうか?-
松崎さん:「上みそせんべい」や「生姜せんべい」などせんべいと名の付くお菓子は昔からずっと作っています。「蜂蜜ふらい」や「蜂蜜黒まめ」は約15年前に開発したお菓子です。いまではこちらの「蜂蜜ふらい」「蜂蜜黒まめ」などが主力商品ですね。
-約15年というとロングセラーですね!その主力商品がうまれたきっかけは何ですか?-
松崎さん:私は地元の高校を出て企業に勤めていました。約20年前、父の経営する松崎製菓に入社しました。せんべいのイメージは、田舎の方でおじいちゃんとおばあちゃんが手作業でやっている感じですよね。
-確かに職人さんがコツコツと仕事しているイメージがあります。-
松崎さん:私が入社して数年間は商品をもって県内外の卸問屋を回わりました。でも怖いぐらいに相手にされませんでした。地元でも少ししか並べてもらえなかったのです。だから、これからの時代に売れるものを作ろう!と考え今の主力商品である新商品を開発することになりました。
-新商品の手ごたえはどうでしたか-
松崎さん:昔からの商品と、新しく開発したお菓子を並べると、新商品を買われる方が多かったです。私のお菓子開発への考えと昔から続くウチの技術は間違っていないと思いました。福岡や広島、四国のスーパーで一件扱ってもらえると売れるので、島根県外でもじわじわと広がっていきました。今では山陰ではおいてない店がないと思いますよ。関東では紀伊国屋や明治屋といった有名量販店でも並べてもらっています。
-先ほどから気になっていたのですがこの賞状は何ですか?-
松崎さん:これは全国菓子大博覧会の賞状ですね。「蜂蜜ふらい」をはじめ様々なお菓子で何回も受賞しています。もちろん、技術がなければ貰うことはできません。それに地元でずっと仕事をしてきた実績や売り上げがなければだめなので、いいものを作るだけでは受賞できません。
-昔ながらの技術と、ずっと地元で愛されてきた歴史があるからこそ貰えた賞なのですね。それではお菓子に対するこだわりがあれば教えてください-
松崎さん:一番人気の「蜂蜜ふらい」で説明します。まず、原料にはすごくこだわっています。とくにフライビーンズ(そらまめ)は特注品ですね。せんべいを焼く工程は独自製法でちょっと言えません(笑)なんといっても特徴は豆がすごく多いところです。
-確かに。半分以上が豆といっても過言ではないですね-
松崎さん:コンセプトは「豆を食べるせんべい」です。これは新しい客層を作ることを意識して開発しました。
-甘さ控えめで塩味も感じられるので、たくさん食べられてしまいます。-
松崎さん:おつまみとして買われる方もいます。うちの商品のなかでは「蜂蜜ふらい」が一番多く賞をとっています。地元企業とコラボすることもありますし、鳥取や山口の観光地でパッケージを専用に変え売られているところもあります。お菓子をいろいろな人に認めてもらえたからコラボしたり、店先に置いてもらえたりしているということですよね。
-島根県出身の身としては「山陰の味」が全国レベルで受け入れられていると思うと感慨深いものがあります-
松崎さん:菓子博覧会の賞状を見ると、高級なお菓子みたいですよね?でも松崎製菓で作っているお菓子はすべて、スーパーで200円から300円くらいの価格帯で売られています。スーパーとか百貨店のバイヤーが私たちのお菓子を見るとこの価格帯で売るのはもったいない、とおっしゃるのです。しかし、普段から食べるお菓子を売っていきたいというコンセプトが自分の中であります。
-「普段使い」は譲れない部分なのですねー
松崎さん:絶対に崩したくありません。だから、ずっと取引が続く方に卸しています。100ケース一回で終わる方より、10ケースがずっと続くところに置かせてもらいます。普段使いのお菓子というコンセプトは私の中で絶対に曲げたくないと思っています。
-職人の心意気を感じます。全国レベルで表彰されるたり、ずっと地元で愛されているのも強いこだわりを曲げないからですね-
松崎さん:そうだと思います。こだわりを曲げずに仕事をしてきたので、地元の企業や観光地の方も評価してくださりタイアップさせていただいています。しかし、松崎製菓というメーカー名が有名になるよりも、松崎製菓のお菓子が「地元にないといけんねえ」といわれるようなものにしていきたいです。
さいごに
取材に行く前は、地元の味を守る老舗のお菓子屋さんって「堅そうだな…」という印象を持っていました。ですが実際は全然違いました。守るべきところはとことん守る。しかし変えていくところは恐れずにどんどん変えていくという考えをお持ちでした。
伝統の味と「どんどん変えていこう!」という気持ちがカタチになったのが人気No1商品「蜂蜜ふらい」だとおもいます。
山陰のスーパーではどこにでもあるそうなので、職人の情熱を感じながら食べてみるのもいいのではないでしょうか!?
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取材先
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(有)松崎製菓
〒699-0108 松江市東出雲町出雲郷538-5
TEL0852-52-2462
FAX0852-52-2466