おもわずパケ買いしちゃう?<br>かっこいいパッケージの作り方
デザイン

2021/10/07 Thu

おもわずパケ買いしちゃう?
かっこいいパッケージの作り方

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こんにちは、今回取材に行ってきた大学生の中村といいます。
皆さんは、買い物をしていて「どっちにしよう?」と悩むことはありませんか?
僕は高価な物、たまにしか買わない物を選ぶときはどれがいいだろう…
と悩んでしまいます。そんなとき重要になってくるのが見た目、すなわちパッケージです。身近すぎてふだん深く考えることないパッケージですがどんな風にデザインし、製造されるのか気になりますよね。
ということで今回は、島根県出雲市でパッケージ制作をする「株式会社河内」さんにお邪魔してパッケージの作り方を聞いてきました。ワクワクするパッケージのデザインや、そんな工夫あったんだ!という驚きがたくさんあったので皆さんにお伝えしようと思います。
株式会社河内の営業マン、永島さんが取材に応じてくださいました!

今日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくお願いします!

株式会社河内は少し特殊な「印刷技術」を用い、パッケージの製造をする会社です。また作った箱を組み立て、商品を詰める(セットアップ)ところまで手掛ける事もできる、そんな会社です。それでは早速工場を見ていってください。

目次

工場見学へ

永島さん:
      
第一段階では、厚紙に絵柄を印刷していきます。
そして、これが出雲工場の主力、UV印刷機です!
中村:でか!!
永島さん:1つのユニットで1色の印刷がされるので4つ使えば4色の印刷が出来るわけです。この印刷機は8つのユニットを有しているので最大8色の印刷が可能となります。より繊細なデザインに対応できるのです。
中村:やっぱり家庭用のプリンターと仕組みは違うのですか?
永島さん:そうですね!印刷とプリンターの原理は決定的に異なります。もっと言えば、印刷にも様々な方式があります。ここでは説明は省きますが、我々が有しているのはオフセット印刷の、更に言えばUV印刷機という事になります。
中村:なんかすごそうですね…
永島さん:普通、インクが乾くってどういうことだと思います?
中村:え…(考えたことなかったですとか言えない)
インクの水分が抜けて固まるとかですか…?
永島さん:それもありますね。
インクが紙に染み込むことも「乾く」という現象の1つです。ただ、普通のインクだと乾くのに12時間もかかってしまうのですよ。当然ですが乾かないと次の工程に進めません。
中村:ボールペンの文字を触ってしまって滲んじゃうのと同じですね。
永島さん:そうですね!UV印刷はUVインキという特殊なインクを使っていて、紫外線を当てれば瞬間的に硬化する特性があります。0.8秒で乾くと言われています。
中村:ん?0.8秒ですか?
永島さん:一般的なインクは乾くのに12時間かかるのですがUVインキを使った弊社のUV印刷機では0.8秒しかかからないんですよ(笑)印刷機から出てきたときには既にもう乾燥しているという事です。これにより速やかに次工程に移れる事だったり、クリアファイルのようなプラスチックの材料にも印刷できます。

これが印刷機から出てきたシートです。

次に印刷したシートをトムソン機(打ち抜き機)に通す事で、こんな風にくりぬかれて出てきます。箱の展開図ですね。

確かに、パッケージをバラすとこんな感じですね。

永島さん:
     
で、さっきのくりぬいた箱の展開をこの機械に通す事で箱が完成します。箱ののりしろを貼る最終工程ですね。
中村:うーん、かなり複雑でどうなっているのかよくわからない(笑)
永島さん:見てもったのは一部ですがもっと多くの種類の箱を作っていますよ。
中村:ちなみにここで作っているのはどんな商品の外箱なんですか?
永島さん:

それを言ってませんでしたね(笑)
医療品や化粧品、また加工食品や雑貨まで幅広いジャンルの箱を作っています。

パッケージと一口にいっても、業界はいろいろ

中村:先ほど、業幅広くパッケージを作っているとおっしゃっていましたが、取引先はどれくらいあるのですか?
永島さん:
     
現在は800社ほどの企業様と取引させていただいています。その中には上場している大手企業さんから地元の食品メーカーさん、或いは個人のお客様まで幅広く含まれているので、一度は株式会社河内のパッケージを買われたことがあると思います。
中村:独創的なデザインのパッケージも多いですね!
永島さん:そうですね。パッケージは商品を包むための資材としての役割と同時に、その商品の魅力をアッピールする広告の役割もになっていますから、やはり他の商品とは違う点をパッケージの形状などでも表現するんですね!
山陰ではお土産やお菓子を中心に約300社の企業さんと取引をさせて頂いております。「ばたでんクッキー」は前後のライトを起こして、中敷きを線路すると電車の模型としてディスプレイすることができますよ。

これは日本酒の外箱ですね。小さな日本酒の瓶をセットで入れることができて、よく見る一升瓶ビンケースのミニチュアになるようデザインしています。

すごいですね!
パッケージデザインの方針ってどうやって決めているのですか?例えばモノトーンですごくオシャレにするとか、やろうと思えばどんなテイストにもできると思うんですが…

ではこの「木次バター」を例にとって考えてみましょう。

はい!

永島さん:
     
「木次バター」は島根県雲南市にある、木次乳業さんというとても真面目な業者さんが作られているバターです。これ、何円に見えますか?(笑)
中村:ちょっと高級そうです。普通のバターがだいたい350円くらいなので、450円くらいでしょうか?
永島さん:実はこれ800円です。確か・・・
中村:高い‼
永島さん:そうなんですよ。ですからメインターゲットは地元ではなく東京です。このパッケージで工夫したポイントは中にしおりを追加したことです。
中村:え?(あれ、それだけ?)
永島さん:しおりで商品のこだわりを説明するとともに…
見てください、しおりのすみっこ。
中村:目盛りがありますね。
永島さん:
     
この目盛り1つがバター10g分になっています。実際に購入していただいたお客様に対して我々箱屋が出来る事は「この商品は細部までこだわり、いい材料を使って一生懸命作っておられるんです!」ということを何とかして伝えるという事なんです。ただ単にデザインが良いだけでなく、パッケージに何気ない気遣いをする事で、この商品の良さが伝わるといいなぁ~と思っています。
中村:確かに800円の高級バターなら、地に足がついているような商品が買いたいかもしれません…
永島さん:木次乳業さんからお話を聞いて感じたのは、日々本当に手を抜かず製品を作っておられるという事です。だからそれが伝わるようなデザインにすることが私の仕事だと思ったんです。10gの目盛りは、実際はお客様が使う場面は少ないかもしれません。ですがそこまで気に掛けてるいう事が伝わればいいです。
中村:うーん深いですね。ただ飾るようなデザインではなく、中身を体現するデザインを考えるわけですね。

デザインのこだわり

中村:これまでの話を聞いていると、パッケージデザインが販売戦略にかなり結びついている気がします。
永島さん:
     
そうですよ。パッケージ戦略という言葉があるくらいですから。
中村:パッケージの企画段階でなんというか…、細かい部分が企業さんの思い描くイメージと違ったり、逆にこれはダメ!とシビアになりそうですが、そこら辺は難しくないですか?
永島さん:もちろんクライアントの意見は尊重します。それを汲み取った上で基本的な設計やデザインのイメージは我々が責任をもって行います。形状の設計士もいますしデザイナーもいます。それぞれのプロに対して我々営業が意見をまとめて指示するわけですね。
中村:形状やデザインの指示を営業の方がするものなんですね!?
永島さん:そうですよ。ただクライアントの元へ走って話を聞いくだけが営業ではないですよ。商品の価格から箱にはいくら位の費用がかけられるのかを考慮し、その上で独創性だったり、組み立てやすさを考えながら形状を絞り込みます。
中村:ほうほう。
永島さん:
     
形状を決めると次は絵柄(デザイン)です。お客様の思いと共に印刷などの条件を明確にデザイナーに指示する事で、より実現可能なデザインが仕上がってきますね。
中村:うーん、営業の仕事ってやる事、考える事が多いですね~!!
永島さん:常に20以上の案件を平行に進めている感じですよ。ちなみに山陰の営業はすべて私が担当しています。なのでたまに、こんがらがってます。歳です(笑)
中村:ええ!!山陰だけでも300社あるって言ってましたよね?
永島さん:パッケージのデザインや形状は、営業マンによるところが多分にあると思います。やはり最初に指揮する立場にありますからね。
中村:僕が勝手に想像していたパッケージ製造とイメージが違いすぎて
混乱を受けています…
永島さん:そうですか。まぁ何も考えずに流れるように作る箱も勿論ありますよ(笑)面白いなぁと思うのは、例えば和菓子屋さんが箱を作る時に洋風のテイストを盛り込んでほしいと要求があったり、逆に洋菓子に和の雰囲気を出したいと希望されたり。日本酒だけどまるでワインのようなデザインにしたかったりと、、、そういった時に幅広い業種の箱のデザインや製造をしていると、自分の経験自体が他のシーンで役に立つんですよね~。昔は「こんな箱を作ってください」と、商品の中身が完成した後に指示されていたのですが、今は商品の企画段階でお声をかけて頂くのが殆どです。なので商品のネーミングも考えますよ。それだけパッケージデザインの重要性が理解されてきたのでしょうね。
中村:今日はなんだかデザインの奥義を教えてもらった気分になりました。最後に、パッケージのここに注目してほしい!という部分があれば教えてく
ださい。
永島さん:どれだけユニークでオシャレなパッケージでも「商品をお客さんに確実に届ける」事と「取り扱いがしやすい」という2点は必ず保たなければなりません。その制限の中でどれだけの工夫ができるか?ということを私たちは考えています。他社のパッケージメーカーさんも、きっと一所懸命考えていると思います。なので生産者さんの思いとパッケージメーカーの努力の結晶であるこの「箱」を、もし時間があれば手に取ってじっくり見ていただけたらと思います。箱の中身は『未来』です!箱は一度フタをすると、次開けるときは必ず未来になります。だから箱の中は過去のモノですが、考えようによっては未来が詰まっているんだと思いながら、開けて欲しいです(笑)

中村のイチオシパッケージ

本型のコーヒーのパッケージです!パッケージは捨てられてしまいがちなもの…。中身を取り出した後も、小物入れやインテリアとして使ってもらえるよう工夫することもあるそうです。私自身コーヒーと小説は大好きなので、本棚に飾ってみたいと思いました。

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取材先

取材先画像

株式会社河内

出雲工場
〒693-0043 島根県出雲市長浜町516-50
TEL: (0853)28-0139
https://www.hakoya-kochi.com/

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