玉造の勾玉の歴史を紐解く
お土産

2022/01/27 Thu

玉造の勾玉の歴史を紐解く

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みなさん、玉造といったらなにを思い浮かべますか?
...温泉?美肌?
そう、勾玉ですよね!(圧)
玉造はその名の通り古くから勾る里であり、三種の神器の一つ「八尺瓊勾玉」発祥の地とも言われています。(長くなるので詳しくはこちらを→ 出雲玉造とは|全国で唯一、出雲型勾玉を伝承する いずもまがたまの里 伝承館 出雲・玉造温泉 (magatama-sato.com)

現在でも謎が多く残されている勾玉なのですが、実はロマン溢れる秘密もあったんです!


今回は、「いずもまがたまの里伝承館」にお邪魔してミステリアスな魅力も秘めた勾玉の歴史を、めのう細工職人をされている、村田誠志さんにお話を伺いました。
村田さんはもともときれいな石が好きで、大学時代に地質学を専攻し、鉱物や岩石の研究をされていたとのこと。
それに加えて美術にも興味があったためきれいな石を彫刻できたら楽しそうだなという思いから、めのう細工職人になろうと決意されたそうです。

目次

1.勾玉作りに適した出雲石


玉造で勾玉が作られるようになったのは、弥生時代後期に入ってからと言われています。
玉造にある、花仙山という山から採れる出雲石は碧玉(水晶の仲間)の一種で勾玉作りに適しているそうです。
碧玉は、日本でも新潟など日本海側で採れる石ですが、中でも出雲石は色が濃く、ち密で硬いことが特徴。
そんな良質な石が安定的に採れて一大産地だったこの玉造で、勾玉を作るほかありませんね!
弥生時代から使われるのにもそういった理由があるのでしょう(^^)

村田さん自身、出雲石以外の碧玉で勾玉を作ったこともあるそうですが、やはり出雲石は硬いらしいです。
もともと碧玉は水晶よりも硬い石なのでサンドペーパーでも削ることができないのですが、その中でも群を抜いて硬いのが出雲石です。
こちらがその出雲石。

色の濃い部分は硬く、ち密。
淡い色の部分は柔らかい。

出雲石は色の濃い部分が特に多く、その部分はよく光るため磨くとピカピカの勾玉に✨なります。
画像のように、1つの石でも色の違いで硬さが変わるため、力加減を調節することが大変だそうです。まさに職人技!(^^)!
筆者は柔らかい、淡い色の部分の方が加工しやすいんじゃないかと思ったのですが...。
実は、柔らかいほうが逆に削れ過ぎてしまい形が取りにくいそうです。
それに加え、柔らかいとツヤが出ないのが最も加工が難しいとのことです。
勾玉作りに最も適した出雲石が豊富に採れる玉造だからこそ、古くから栄えたんですね(^^)

ちなみに、勾玉はさまざまな石で作ることができますが、村田さんお気に入りの石はこちらのアクアマリンです。

理由はきれいな水色が好きなことと、そして、奥様の誕生石だからだそうです!
結婚する時も奥さんにデザインしてもらった通りに削ったアクアマリンを指輪にしてプレゼントしたそうですよ。ロマンチック( *´艸`)

2.勾玉作りの工程

玉造で高品質な石が採れるのはわかりました。その高品質だけども加工が難しい石をどのように加工しているのでしょうか?
いずもまがたまの里伝承館では、めのう細工職人さんの勾玉作りを目の前で見学することができます。筆者も見学させていただきました~!
こちらの工房では現在6人の職人さんが1つ1つ丁寧に製作されています。
順番に見ていきましょう。

①石の選別
ひび割れや淡い色の部分の少ない石を選別します。
大きな勾玉を作る際に2か月以上も探し回ったこともあったそうです(゚д゚)!





②カット
勾玉のおおよその大きさに切断していきます。





③成形
だんだん勾玉っぽくなってきましたね!






④磨き・艶出し
ツルツルに仕上げていきます。

なんと、1つの勾玉を作るのに4~5時間かかるそうです(゚д゚)
とてつもない集中力ですね!

3.古代の勾玉作り



当時は現代のように便利な機械がない中でどのように作られていたのでしょうか?
遺跡から実際に出てきているのですが、砂岩を切り出してそれを砥石代わりにして、石を磨いていく方法で作られていたそうです。
砂岩で削って形を作ると、ざらざらなのでもっと目の細かい石で磨いて最終的に木で磨いていたといわれています。
まな板に弁柄(土から採れる研磨剤のようなもの)をふりかけて、水を垂らして塗って、そこに勾玉を擦るとだんだんとツヤが出てくるそうです。それを今でも弁柄を酸化クロムに応用して磨いているそうです。

勾玉には穴が開いていますが、鉄のない時代はどうやって開けられていたのでしょうか?
鉄が入ってきてからは釘のようなもので開けていたそうですが、それ以前は竹紐で開けていたのではないかとも言われています!そこには先代の知恵が隠されていました。
もみ殻を燃やした灰の中に水晶と同じ成分が入っているため、それを勾玉にまぶして火で燃やした竹紐を使い、摩擦で穴を開けていたのではないかと考えられています。
諸説ありますが、古墳からも途中で放棄された勾玉の周りに炭が付いているものが発見されため、有力な説とされています。
この方法を試してみて、実際に開けた人もいるんだとかΣ(゚Д゚)

さらに、時代を遡るほど勾玉の形も複雑になっていることも勾玉の謎の一つ。
不思議ですよね~。

4.勾玉の形の秘密

突然ですが、ここで勾玉クイズ!

こんなにも手間がかかる勾玉は、なんのために作られていたでしょうか!

正解は…

「お守り」でした!

今ではアクセサリーの1つだと思われがちですが、日本のお守りのルーツと言われています。
頭の方が太陽で三日月を重ね合わせた形だというのが出雲地方で作られる勾玉の最も有力な説です。

宇宙の象徴である太陽と月を身に着けることで、自然の力で身を守るという思いを持って作られていたのではないかと言われています。

時代が経つと、貴重な碧玉で作られているため、量産はできないものであることから権力の象徴としても用いられるようになったそうです。
3種の神器の1つでもあるため、古墳から勾玉が出土することから王族や皇室が持っていたり、聖徳太子もつけていたのではないかとも言われているそうです。
さらに時代が下ると、みんなが身に着けるアクセサリーへと変化していったのです。

ここでふと疑問に思ったことがありました。
勾玉に開いている穴はお守りとして身に着けるために、膨大な時間をかけて開けられるのか?
そこには、ロマン溢れる云われがありました!
勾玉を自分として、一方は先祖との繋がり、もう一方は子孫との繋がりと考え、その両者を繋ぐ穴だとされているそうです。
ただネックレスにしたいからという単純な理由ではない、なんだかおしゃれで素敵な言い伝えですよね(^_-)-☆

5.製作のこだわり

今年で21年目を迎えるベテランめのう細工職人の村田さんに製作中のこだわりをお聞きしました。


玉造で作られるのは“出雲型”と呼ばれるもの。(全国的にはしっぽが尖った“大和型”と呼ばれるものがよく作られるそうです)
“出雲型”は曲面が特徴の勾玉なので、なめらかに丸みを出すように作ることを前提として作られているそうです。さらに、縦・横・幅の比率が決まっているので、その範囲を目指して製作されています。すごい技術!

また、製作中は自分の想いを込めないようにすることが気持ちの面でのこだわりだそうです。
技を駆使して「これでどうだ!」みたいな作品ではなく、お客様に身に着けていただいて、各々の想いを乗せることができるように、余白を残しておくことが重要だとのことです。
確実に納得の行くものを妥協することなく作っているそう。
巧妙な技術と謙虚さから1つの勾玉が作り出されるのですね!

6.最後に

なんと、勾玉作り体験もさせていただきました(*^^)v
こちらでは日本で唯一、職人さんに直接教えてもらえる勾玉作り体験ができます。
さらに、こんなに綺麗な宍道湖を眺めながら作業ができちゃうんです!

まず、石を選びます。
サクッとできる30分コースとちょっとじっくりの60分コース、難易度高めの90分コースの3種類があります。

筆者は30分コースのピンク色の石を選びました。
まず紙やすりを使って削り、石を水につけながらさらに目の細かいやすりで磨いていきます。
最後にワックスを塗って完成!

どうでしょうか?自分で作った勾玉はとても愛着が湧くものですね(´ω`)
不器用な筆者は綺麗にできるか不安でしたが、不器用な人ほどいいものを作ると村田さんに教えていただきました。
「器用な人はすぐにこなして『綺麗にできた』ことに満足してしまうが、不器用な人が一生懸命作る勾玉は試行錯誤して苦労した分、味が出て深みのある良い作品になるのだ」と、村田さんの師匠がおっしゃっていたそうです。

最後に、
「弥生時代から続く出雲の勾玉作りの伝統が今でも根付いている玉造温泉にぜひお越しください」
と村田さんからメッセージをいただきました。

歴史に触れ合い、勾玉作りも体験できるこの「いずもまがたま伝承館」。
玉造に来た際の思い出作りにぴったりです!

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました(´▽`)

【追記】

令和4年1月31日(月)をもって、いずも勾玉の里伝承館が閉店することになったそうです。実際に取材に行かせていただき、めのう職人さんの姿や思いを目の当たりにしたため、寂しい気持ちでいっぱいです。
ですが、伝承館にある展示物や職人さんは、今年度中に「めのやしんぐう 玉造温泉店」に移動する予定(※)とのことなので、ぜひ足を運んでみてください!
※…変更の可能性あり

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取材先

取材先画像

株式会社めのや

いずもまがたまの里 伝承館
営業時間:9:00~17:00(年中無休)
島根県松江市玉湯町湯町1755-1
Tel: 0852-62-2288 / Fax: 0852-62-2239
出雲・玉造温泉「いずもまがたまの里 伝承館」公式サイト|全国で唯一、出雲型勾玉を伝承しています (magatama-sato.com)

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