西製茶所四代目が語る『お茶の価値』日本茶だけじゃなくて紅茶も作ってる?
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2023/03/28 Tue

西製茶所四代目が語る『お茶の価値』日本茶だけじゃなくて紅茶も作ってる?

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 出雲市斐川町の最寄り駅から歩いて20分のところに西製茶所はあります。駅からの道中にある用水路に流れる水は太陽の光が差し込んでキラキラと輝いています。歩いているだけで気持ちがリフレッシュしちゃいました。そんな豊かな時が流れる場所で西製茶所さんは日本茶の製造に加え、国産紅茶の製造をしています。なんと国産紅茶の製造を始めたのは今から38年前。今回は4代目 西龍介さんにお茶にまつわる基礎知識からお茶に対する想いについて丁寧に教えていただきました。

用水路の水がキラキラと輝いている様子

目次

1.西製茶所の基本情報

外観

西製茶所では従業員6人でお茶の栽培・委託・加工・販売のすべてを行っておられます。日本茶を始め国内では珍しい国産紅茶の製造やベルガモットオレンジ、出西ショウガ、レモングラスなどの栽培も行っておられるところが西製茶所の特徴です。

出西しょうがとは出雲市斐川町で栽培されているブランド生姜のことです。(参考:しまね観光ナビ|島根県公式観光情報サイト (しまね観光ナビ|島根県公式観光情報サイト (kankou-shimane.com))/写真提供:西龍介さん)

2.国産紅茶が生まれたワケ

――早速ですが、西製茶所さんはどのようなことをしているのですか。

もともとはお茶の委託加工業からスタートしていて、今は委託加工業に加え、製造・販売も行っています。出雲はよくお茶を飲む文化があると言われてるのはご存じですか。

――はい。私の出雲にある実家でもお客さんが来るとアポなしでもうちにお客さんをあげて、お茶を出しています。お茶をのみながら世間話に花を咲かせています。

そうですよね、それも出雲の文化だと思います。昔は、お茶を買うというのがなかなか大変だったので、家庭菜園のようなイメージで、自分のところでお茶を栽培していたんです。その生葉を製茶に加工するにはそれなりの技術や設備が必要なので、それを私共が委託加工という形で行っていたんです。

初代、二代目は基本的に委託加工を行っていて、父が三代目になります。当時は日本茶ばかり作っていたのですけれど、父の代からは国産紅茶の製造に取り組んだり、製造したものの販売を始めたりしました。紅茶を作っているというのは、私共の特徴の一つになっているのかなと思います。1985年から紅茶の製造を始めまして、38年になります。当時は国内でも片手で足りるくらいしか紅茶を作っている人はいらっしゃらなかったんじゃないかな。

――ふつうのお茶屋さんは紅茶を作ることはないんですか。

あまりないと思います。ただ、ここ十年くらいで実は、日本全国で紅茶を製造するところの数は増えています。

――紅茶って海外のイメージだったんですけど...

そのあたりをお話しすると、例えば、ダージリンという土地は昔から紅茶製造しているイメージだと思います。しかし、実はもともとはダージリンにお茶の木ってなかったんですよ。イギリスがダージリンを植民地にして、木を持って行って産地にしてるんですよね。

――え?!ダージリンって土地の名前なんですか!ダージリンってカフェのメニューでよく見るから、お茶の品種だと思っていました!

インドのダージリンという土地の名前です。アッサムというのもあるんですけど、これもインドのアッサム地方のものです。セイロンというのもありますよね。これはスリランカのセイロン島です。地名で分けるのはとても一般的です。

――だから紅茶は海外のイメージがあるんですね。では、日本では紅茶は作られていなかったんですか?

日本も一生懸命紅茶を製造して販売しようとしていた時期がありまして、それは明治初期なんです。明治初期は、江戸時代末期の鎖国が終わったことを背景として輸出をするようになりました。日本は輸出品として、1位は生糸って言われていますよね。続く2位がお茶なんです。ただ、当時輸出されていたお茶というのは、日本茶だったんですけど、当然輸出していこうと思うと海外のマーケットなので、紅茶のほうが飲まれています。日本が輸出品としてやっていくのであれば、日本茶より紅茶を売って外貨を稼がないといけないと考えたのが初期の明治政府でした。

大久保利通の命で、人が産地に派遣されて、種を持って帰ってきたり、紅茶の伝習所が日本各地に作られたり、熱心に紅茶の産地化に取り組んでいた時期がありました。ただ、ダージリンとかスリランカなどの産地が出てきて、品質的に追いつかなかったり、日本も変動相場制から変わっていって、紅茶以外の需要があったりして衰退しました。日本での紅茶製造が一気に衰退して、誰も「日本で紅茶なんかなかったよね。」ってなった時期もある程度ありました。父の代でそれを復活させたいという思いがあって、国産紅茶の製造に取り組み始めたという経緯があります。

――日本で紅茶を作っている時期があること自体知りませんでした。国産紅茶を復活させるというのは、例えるなら、絶滅した恐竜を復活させるいわばジュラシックパーク状態ですね。

3.お茶にまつわる基礎知識

――そもそも紅茶はどうやって作るのですか。

基本的には同じ木からお茶も紅茶もウーロン茶も作ることができます。何が違うかというと、作り方が違うんです。バナナやリンゴの皮をむくと茶色くなりますよね。あれは、バナナやリンゴの中に酸化酵素という酸素を結合させる酵素が含まれていて、それで色が変わるんです。実は、茶葉にも酸化酵素が含まれています。紅茶を作るときには、基本的に生のまま、つまり加熱をしないまま、揉みこむんです。そうすると、生葉から出る汁が外の酸素と触れて、さっきの酸化酵素が働いて色が茶色っぽくなるんですよ。香りの成分も酸化重合することによって、成分が変わって紅茶らしい色や香りが作られます。

では、日本茶の場合は何が違うかっていうと、最初の段階で酸化酵素を働かせないようにするんですよね。酵素というのはご存じの通り、タンパク質からできた触媒ですから、加熱することで壊れます。なので、日本茶である「煎茶」を作る場合は、収穫してできるだけ早いうちに蒸すという工程を行います。茶葉は最初に蒸して加熱して酸化酵素を壊します。簡単にいうと、加熱した後の茶葉を乾かしながら揉みこんでいくことで、酸化酵素が壊れているから茶色くならずに緑のままになるということです。ウーロン茶はその中間といえます。つまり、ある程度、酸化発酵させるという感じです。

――酸化させるかさせないかで色が変わり、種類が分かれるんですね。

お茶の種類を変えるのは酸化発酵の度合いです。酸化発酵には分類があり、日本茶は不発酵茶っていうんですけど、ウーロン茶は半発酵茶、紅茶は全発酵茶という分類になります。

――お茶の種類っていろいろあるんですね。

はい。半発酵っていうのが一番広くて、全発酵茶と半発酵茶の間を全部、半発酵茶というので、半発酵茶であるウーロン茶の世界は広いです。ちなみに、煎茶は不発酵茶の一種です。不発酵茶=緑茶と考えていただければいいです。つまり、煎茶は緑茶の一種です。

――こちらで作っておられるお茶はどのような種類があるのでしょうか。

お茶は緑茶・紅茶・ほうじ茶・ノンカフェイン茶の4種類作っています。

――お茶を栽培するうえで大変なことは何ですか。

草が大変ですね。茶畑ってこういうイメージじゃないですか?

(写真提供:西龍介さん)

ここまでくると草とかが真下に生えにくいんですけど、最初のお茶の茶畑作るときってこういう感じなんですよ。

最初の茶畑(写真提供:西龍介さん)

土に埋まっているだけなので、周りとかは草が生えますし、収穫もできないです。こういう状態から草取りの日々が5,6年続くんです。当然この間、草をとってるだけで収益がゼロになります。

(写真提供:西龍介さん)

7,8年でここまで成長します。夏はすごく暑くて、雨がなかったりするので、そうなるとお茶の木の弱くなるので、なかなか大変です。

4.西製茶所さんが提供するお茶の価値

――近年、ほうじ茶と名前の付く商品が流行るなど、若者の間でもお茶に注目しているように思いますが、それに関してどう思いますか。

父の代は若い人のお茶離れが叫ばれた時代でした。昔はお茶しかなかったんですけど、コーヒーが出てきたりして、いろんな選択肢がある中でお茶がだんだん離れていったんです。近頃、日本茶もすごく見直されているように感じますし、国産紅茶もここ数年で増えてきたことによって、数年前では「国産紅茶ありますよ。」と言っても、「そんなのあるんですか。」という反応だったんですけど、近頃は、「そういうのがあるんだってね。」というような反応に変わった。「同じ木からお茶がつくられるらしいね。」という話を消費者からも聞くようになり、認知度としてはすごく高まってきていると思います。最近では、日本茶カフェのようなものもできていますね。面白い動きになってきていると思います。一度、自分の国の文化を見直すという動きになっているような気がします。

――西さんの考えるお茶の価値とはなんでしょうか。西製茶所が提供するお茶の価値とは何でしょうか。

お茶を作る考え方とかは、当然お茶屋さんごとにあると思います。最近では、高級路線のお茶もありますが、私共は一般的にご家庭で毎日飲んでもらえるようなお茶を作りたいという思いが根底にあります。お茶は効果効能みたいなものも言われることもあるんですけど、父(三代目)はよく「水のように空気のように」と言っています。普段何気なく飲むけれど、そんなに意識しないけれど、メインではないけれど、なくなると困る。生活に溶け込むようなお茶になればいいなと思って作っています。その中でいいことがあればいいんじゃないですかね。美容とか健康とか。美容とか健康のために飲むわけではないです。

若者も「お茶しない?」と言うじゃないですか。コーヒー飲むときもその意味合いは「ちょっとのんびりして話していかない?」ということですよね。お茶には、ただしゃべるんじゃなくて、お茶をのみながら、お茶を通してコミュニケーションを円滑にするという効果もあると思っています。お茶を作ってお茶を届けるという仕事ではあるが、その奥にあるのはリラックスの時間を届けるというものでもあると思います。

――西製茶所さんが提供するお茶の価値は、私たちの生活を豊かにしてくれそうですね。

【ここで、ホッと一息お茶知識】
コンビニエンスストアでも見かける「アールグレイ」。皆さんも一度手に取ったことがあるのではないでしょうか。私は名前がおしゃれだからという理由から飲むようになりました。なんともいい香りがするのが特徴です。さぞかしいい香りの茶葉なんだろうな…なんて思っていましたが、実は着香茶といわれる部類のお茶で、紅茶にイタリアが主産地のベルガモットオレンジという柑橘の香りをつけたものなのです。

ベルガモットオレンジ(写真提供:西龍介さん)

自家製のベルガモットオレンジはこちらの商品に使用されています。

出雲国のアールグレイLimited Edition02 – 西製茶所 (shop-pro.jp)
(※本製品は限定製品の為、時期によっては商品ページが非表示となる場合がございます。)

…じゃあ、ジャスミンティーもその類か…なんてわかった気でいましたが、ジャスミンティーは紅茶ではなく緑茶とジャスミンの組み合わせだそうです。

――今後もお茶が続くために伝えたいことはありますか。

日本茶はおじいちゃんおばあちゃんの飲み物ではないです。お茶を飲んでいない今の若い人たちがおじいちゃんおばあちゃんになったら飲み始めるかと言ったら、そういうわけでもないですよね。お茶を飲むことは広くとらえると文化であり、それが生まれる場所は家庭です。親さんや子どもの周りにいる人が気付いたときに、ちょっとずつお茶を飲む時間を作ると、文化も残っていくような気がしますけどね。自分自身、子どもがいる親世代なので、子どもにお茶を飲むということの良さを伝えたいです。

紅茶を通じて日本茶にも興味を持っていただけると思います。規模としては小さいけれど、だからこそできることがあります。国産紅茶にチャレンジすることもその一つです。アールグレイも3年前から作り始めています。商売というよりは、「国産のアールグレイを作りたい。」というからスタートしていますね。

アールグレイに使うベルガモットオレンジはイタリアが主産地です。私たちは香料を使いたくないから、10年前にベルガモットオレンジの苗を入手して、何年か前から実が取れるようになりました。なので、乾燥させたピールを使って国産のアールグレイを完成させました。国産のアールグレイは珍しいと思います。こういうものを作ることによって、お茶への興味関心を持って、深まってもらうといいなと思っている部分はあります。

必ずしも紅茶を飲むときにうんちくを理解していないといけないわけではないので、おいしければおいしいでいいんじゃないかなと思うんです。ただ、ある程度うんちくをわかっていると、自分の好みがこれなんだなというのがだんだんわかってきたりだとか、こういう時にはこういうお茶を飲んだほうがいいなとか分かってくるので、うんちくを理解するのはそういう意味ではいいかもしれないですね。

【メモ】
私は最近いろんなお茶の種類を試していて、その日の気分によってお茶を選ぶのが楽しいです。

――お茶のある暮らしっていいんだろうなと思います。具体的には、お茶を飲むときだけじゃなくて、淹れるときのゆったりした時間とか、香りを嗅ぐときとか、道具もそろえていみたいです。

若い人で茶器をもっていない方ってすごく多くて、そういった方に向けて私共もティーバックという製品を作っていて、モノによってはティーバックのほうがよく売れるということもあります。お茶は生活に潤いを与えてくれるものだと思うので、淹れる時間も含めて楽しんでいただけたら一番ですよね。

――それぞれのお茶のおいしさというのはどのような基準で決まるのでしょうか。

よくおいしいお茶の淹れ方を教えてくださいって聞かれるんですけど、個人的にはおいしお茶っていうのは人によって違ってて当然だと思います。それより、好みのお茶を探せたほうがいいのかなって思っています。お茶を構成する要素って、香り苦み甘み見た目などいろいろあると思うんです。これらの要素のバランスがどこが一番好きかってところを探すことだと思います。いろんなお茶があることは間違いありません。その中で、自分はこういうのが好きなんだっていうのを見つけたほうが楽しいと思います。

――ちなみに、西製茶所さんで作っておられる国産紅茶にはどのような特徴がありますか。

べにふうき」は一番、味・香りのしっかりしたタイプで、紅茶らしい苦みもあるんですけど、その分香りもしっかりあります。私共はべにふうきの木を植えたのが1999年からなんですけど、それまでは出雲国の紅茶という商品しかなくて、それから「べにふうき」や「べにひかり」という品種から作った紅茶ができて、3種類できました。なので私共が作った紅茶を飲む人のシーンや好みに合わせてお茶をお勧めできるようになったのはすごくうれしいことです。

【ホッと一息お茶知識】
みなさんは茶畑の地図記号をすぐに思い浮かべることができますか?茶畑の地図記号は⛬(←これです)。この話を聞けばもう悩むことはありません!まずはこちらの写真を見てください。

(写真提供:西龍介さん)

実はこれはお茶の花です。なんと、お茶の木には椿のような小さい花が咲くのです。この花が実になると種が3つできます。それがこちらの写真。

(写真提供:西龍介さん)

地図記号と比べてみると3つの種が3つの点として表されていることが分かりますね。これでもう迷うことはありません!

5.最後に

――最後に何か伝えたいことがありましたらお願いします。

お茶を楽しんでいただきたいです。ちょっとした淹れ方でも変わってきますし、どんなお茶を飲むかという楽しさもあります。一人で飲むのもいいし、誰かとお茶するのもいいですね。そういうのが日常の生活に溶け込んでくるといいのかな。お茶を通して豊かな生活になるといいと思います。

▮西製茶所の皆様へ
取材にご協力いただきありがとうございました。私にとってはなじみのあるお茶ですが、お茶について知らないことだらけでした。自分の好みのお茶を求めてこれからお茶の旅を始めます!

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取材先

取材先画像

西製茶所

島根県出雲市斐川町出西2720-1
0853-72-6433
営業時間:9:00~17:30
ホームページ:西製茶所 (nishiseichasho.jp)
オンラインストア:西製茶所 (shop-pro.jp)

 

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