「1000年先へ和紙をつなぐ」
物語

2023/06/13 Tue

「1000年先へ和紙をつなぐ」

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今回は、島根県松江市八雲町にある「安部榮四郎記念館」にお邪魔してきました!
インタビューに応じてくださったのは、館長の安部紀正さん。記念館の名前にも入っている安部榮四郎氏の孫にあたります。「安部榮四郎記念館」は、名前の通り、和紙の世界の人間国宝であった安部榮四郎氏が、出雲民藝紙の普及等を目的として建てた記念館です。今回は、出雲民藝紙のことだけでなく、それを1000年先へつなげようと尽力した安部榮四郎氏や記念館についても掘り下げていこうと思います!

※写真1 記念館にあった民藝紙をもちいた工芸品。可愛くて思わず写真を撮ってしまいました!

目次

1.和紙について

1)八雲町で和紙が生産されている理由

本日は、どうぞよろしくお願いします!早速ですが、そもそもなぜ、松江市八雲町で和紙が生産されているのでしょうか?

ここ、松江市八雲町で紙すきが始まったのは、400年前の江戸時代です。谷間の集落で田畑が少なく、それを補うための副業として始まりました。紙すきの技術自体は、初代藩主である松平直政が来た時に、一緒に連れて来た福井県の紙屋さんから教えてもらったようです。江戸時代は、「御紙屋」という免許制度の元、お殿様に献上する紙を作っていたようです。しかし、明治時代になると、廃藩置県により免許制度がなくなりました。それからは、そういった紙屋さんで紙すきの経験のある職人たちが、八雲町に残り、各々の紙すきを始めたようです。更に、副業として重宝されただけでなく、当時紙自体も貴重であったことから、島根県としても紙すきの文化を奨励していました。実際に、八雲町近辺に工業試験場を作り、そこで技術者の養成や原料の処理のやり方等を研究し、職人たちにおろしていたようです。

なるほど!色々な理由が合わさって、八雲町に紙すきの文化が生まれ、残っているんですね!

2)出雲民藝紙とは?

八雲町で生産されている「出雲民藝紙」は、どんな和紙なのでしょうか?

出雲民藝紙は、安部榮四郎が生涯をささげた和紙です。古くからある和紙の原料は、大きく三種類あります。楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)の三種類です。出雲民藝紙では、それらの特徴をそのまま紙に漉き上げていきます。
楮紙は、素朴で強靭、和紙の特長を最も持っています。三俣紙は、楮紙に比べると幾分繊細で、虫に強い特徴を持っています。そして、「和紙の王」と称される雁皮紙は、独特の光沢と渋みがあり、変色せず、虫にも侵されず、水にも強いです。そして、こまやかな文字を書くことにも適しています。この雁皮紙の製作こそ、安部榮四郎が努力を重ねて磨き上げ、生涯情熱を注いだ手漉き技術です。
※和紙の原料についてもっと知りたい方は、こちら(http://www.awagami.or.jp/awawashi/genryo.html

和紙の原料によって、様々な特徴があるんですね!そして、記念館の名前にもなっている、安部榮四郎氏の功績も大きいのだなと感じました。

2.1000年先へつなぐために~安部榮四郎記念館について~

ここまでお話を聞いていくと、榮四郎氏自身がどんな方だったのか気になります!榮四郎氏は、どんな方だったのでしょうか?

1)安部榮四郎について

写真4 安部榮四郎氏
(引用元https://izumomingeishi.com/abeeishirou/about/index.html

〈略歴〉
 榮四郎氏は、1902年に島根県八束郡岩坂村に生まれました。幼い頃から家業の紙すきを手伝いながら技を学び、さまざまな紙すき方法を試みながら技を磨いていました。のちには島根県下の紙すき職人の間を巡回して技術指導するようになりました。そうした活動の中、民藝運動の祖・柳宗悦と出会い、民藝運動に参加するようになりました。民藝運動の仲間と切磋琢磨しながら、それまでになかった独自の個性を発揮した数々の和紙を創り出しました。その和紙が「出雲民藝紙」と称され、全国に熱心な愛好家を育てました。そんな伝統的な技術を高く評価され、昭和43年(1968年)に文化庁から、重要無形文化財(人間国宝)に認定されました。
引用元 館内にあるリーフレット「紙神のふるさと八雲 出雲民藝紙伝習所 安部榮四郎記念館」

安部榮四郎の一番の特徴っていうのは、民藝運動っていうのに参加して、一緒に民藝運動を推進してきた工芸作家の方からの影響を受けて、自分の紙にそれを反映させてきたということが、他の紙の産地にはない一つの特徴じゃないかなと思います。1200年の紙の歴史を踏まえた上で、そこに「民藝」という一つの新しい思想っていうか考え方を入れて紙を作ったっていうところが、非常に特徴的なんじゃないかなという風には考えています。

※民藝運動とは?
1926(大正15)年に柳宗悦・河井寛次郎・浜田庄司らによって提唱された生活文化運動です。当時の工芸界は華美な装飾を施した観賞用の作品が主流でした。そんな中、柳たちは、名も無き職人の手から生み出された日常の生活道具を「民藝(民衆的工芸)」と名付け、美術品に負けない美しさがあると唱え、美は生活の中にあると語りました。そして、各地の風土から生まれ、生活に根ざした民藝には、用に則した「健全な美」が宿っていると、新しい「美の見方」や「美の価値観」を提示したのです。工業化が進み、大量生産の製品が少しずつ生活に浸透してきた時代の流れも関係しています。失われて行く日本各地の「手仕事」の文化を案じ、近代化=西洋化といった安易な流れに警鐘を鳴らしました。物質的な豊かさだけでなく、より良い生活とは何かを民藝運動を通して追求したのです。
(引用元https://www.nihon-mingeikyoukai.jp/about/

 民藝運動に参加したことによる様々な人との交流が、榮四郎氏の作品作りにとって非常に大切なものだったんですね!

そうですね。その交流から生まれた作品が多いので、特に柳宗悦(民藝運動の中心人物)と出会ったことは、もう人生の中でこれがなければ榮四郎は紙を漉いていなかったと思います。また、彼自身はすごく几帳面なんです。 自分の資料や成績表、ちょっとした塗り絵みたいなものは、皆とってあります。
また、新しいもの好きでもありました。テレビの新しいのでたらすぐ買ってきてくれていましたね。普通のおじいさんなんですけども、そういったきちっと整理することはしていました。本当に、びっくりするほどの資料を集めていました。例えば、新聞も全部スクラップしていて、それを見れば大体の島根県のことや世界情勢のことが分かるくらいでした。紙すき職人だったのですが、外に出る時は、銀髪みたいな感じで、赤いネクタイをしていて、見た目も意識していました。いろんなものに興味を持っていて、常にアンテナが高かったように思います。

2)記念館について

ここからは、安部榮四郎記念館について掘り下げていきたいと思います!
記念館が建てられた目的をお伺いしたいです!

目的は、3つあります。1つは、人間国宝の指定を受けたにあたって技術や自分の技を磨くためのいろんな資料の収集をしっていましたし、人間国宝として作ってきた紙がありますので、その資料を保存して後世に伝えるためです。2点目としては、和紙の評判を上げるためです。3点目は、後継者育成と同時に、技術者の技術を高めたり、厳守するような場を作るためです。この3つを目的として、記念館を建てたようです。

※ちなみに、記念館を建てるにあたっての資金は全て私財で賄ったようですが、地域の方や榮四郎氏の和紙のファンの方からの寄付もあったようです。それだけ愛されていたということですね!

写真5 記念館の外観

※写真6 館内の様子

展示品の特徴を教えてください!

展示は、民芸がメインになってます。それは、「民藝作家の方の作品を展示する中で、着物や絵等との共通点を感じて欲しい」という想いがあるからです。なので、うちには榮四郎が漉いた和紙以外にも、榮四郎と関わりのあった民藝運動の方の作品もたくさんありますよ

※写真7 榮四郎が集めた資料

※写真8 榮四郎氏と関わりのあった民藝運動参加者の作品

※写真9 榮四郎氏の作品たち

3)ミュージアムショップや紙すき体験について

記念館の魅力は伝わったでしょうか?最後に、ミュージアムショップや紙すき体験についてお伝えします!

・ミュージアムショップ
 便箋や名刺用の紙といった実用的なものからだるまといった工芸品まで、様々な商品が置いてあります。若手の工芸作家さんで、「出雲民藝紙を使用したい!」と尋ねてくる人もおられるようです。ちなみに、私は栞を購入させていただきました!

※写真10 ミュージアムショップの様子

また、記念館のお隣の工房では、紙すき体験を行うこともできます(要予約)ハガキサイズのカードから、うちわ、ブックカバーといった商品を作ることもできます!今回は、ハガキサイズのカード2枚と、A4サイズのもの1枚を作りました!

※写真11 紙すき体験の様子

初体験だったのですが、分かりやすく教えてくださったので、楽しみながら制作することができました!

<体験時間の目安>
10名くらい‥‥45分
30名くらい‥‥1時間30分
60名から100名くらい‥‥2時間30分

紙のタイプと料金
A4版色紙1枚・ハガキ2枚 500円
卒業証書1枚 800円
(2023年5月現在)

3.最後に

 いかがでしたでしょうか?是非、これを機に、是非「安部榮四郎記念館」へ足を運んでみてください!取材にご協力くださり、ありがとうございました!

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取材先

取材先画像

公益財団法人安部榮四郎記念館

開館時間 AM 9:00 ~ PM 4:30
休館日 毎週火曜日(火曜日が祝日の場合は翌日休館。)年末年始 展示替え期間中
HP(https://izumomingeishi.com/abeeishirou/index.html

電話及びFAX:0852-54-1745
メールアドレス:eishiro@ia2.itkeeper.ne.jp

取材場所:島根県松江市八雲町東岩坂1754番地

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