干物づくり100年!<br>港町「浜田」の伝統の味を是非ご賞味ください!!

2022/04/07 Thu

干物づくり100年!
港町「浜田」の伝統の味を是非ご賞味ください!!

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(左と真ん中上:のどぐろ、真ん中下:イカ、右:どんちっちアジ)

今回は島根県浜田市の「有限会社香住屋」へ取材に行かせていただきました。
香住屋は浜田漁港から車で約6分の場所に位置しており、浜田の新鮮な魚介を仕入れておられます。私がお邪魔した際は、獲れたてのアジを沢山見せていただきました。
浜田漁港は島根県唯一の特定第三種漁港(以下、特三漁港)です。特三漁港とは、「第三種漁港のうち水産業の振興上特に重要な漁港で政令で定めるもの」とされています。現在は千葉県の銚子漁港や静岡県の焼津魚港など全国で13の漁港が指定されています。(特三漁港について:特三漁港へようこそ|公益社団法人 全国漁港漁場協会 (gyokou.or.jp) )
そのような浜田漁港で100年の伝統がある「香住屋」の干物づくりのきっかけ、製造工程、各商品の魅力などについてお話を伺いました。
ぜひ最後までお付き合いください!

目次

1.干物づくりのきっかけ

―本日はよろしくお願いします。事業のことについて色々とお話しをお聞かせください。楽しく取材させていただければと思っています!

川本社長:はい、分かりました!

―では、まず干物づくりを始められたきっかけについてお伺いします。

川本社長:    うちの香住屋という屋号は兵庫県城崎の香住町が由来になっています。今から約100年前、曽祖父が香住町出身で料理人をやっていました。その曽祖父が浜田に来た際、浜田の魚の魅力を知り、大正8年に料理屋「川本屋」を始めました。
それが浜田で商売をやるようになったきっかけです。
その後料理屋をしながら干物を提供していたら干物の評判が良かったそうです。曽祖父は評判の良い干物を専門にしたほうが良いのではないかと思い立ち、「香住屋」として干物一筋での商売を始めました。
私は幼い頃から祖父の干物づくりを見て興味を持ち、この仕事をやろうと思っておりました。小学校の卒業文集で将来の夢は魚屋と書いた事を今でも覚えています。
(大量のアジの開き)

―浜田の魚は城崎に比べどんなところが魅力的だったのでしょうか?

川本社長:      正確なことはわかりません。香住町もよい漁場です。ただ、魚種的に言うと浜田漁港の方が釣りモノや巻き網漁、沖合底曳き漁など豊富な種類の魚が獲れます。海流などの影響によりエサが豊富なので鮮度の良い美味しい魚が獲れます。また、漁港としての規模が大きく、日本の漁港の10本の指には入っていた事もありました。最盛期には31ヶ統ほどの漁船が底引き網漁をやっていました。

2.商品の製造工程におけるこだわり

―浜田漁港は魚種が豊富で、規模が非常に大きいということが分かりました。続いて、商品の製造工程でのこだわりをお聞かせください。

川本社長:       まず私たちの販売スタイルからお話しさせていただきますね。もともと東京や大阪、広島など都市圏の市場に干物を送って販売してもらっていました。しかし、都市圏の市場に依頼する場合は、商品へのこだわりよりも価格面を評価されたり、また、販売先によっては冷凍や冷蔵などの異なる温度帯での販売があります。販売方法によっては、酸化防止剤を使わなければ日持ちがしない事もあります。(※尚、弊社が酸化防止剤を使用したことはありません。)

弊社は、強みである食塩のみで製造する干物をよりおいしく食べてもらいたいと思い、父の代の途中から通販等での個人客向けの販売スタイルに切り替えていきました。そうすることで一つ一つ手作りした干物の温度帯を変更せず、商品を全国のお客様のもとへ届けられます。販売スタイルの転換はこのような利点があったことが大きいです。これがこだわりの一つです。
(通販サイトはページの最後に掲載しております!)
また、魚本来の味を引き出すため、長年のノウハウを活かし塩加減や干し加減などを調整しています。それに加えて、魚の生臭みのもとになる血合いや内臓などが残らないように一つ一つ歯ブラシなどを使って手作業で魚を洗ったりしています。

―手作業で一つ一つ心を込めて製造しているところもこだわりの一つなんですね。

川本社長:    ただ主役は魚なので、塩は添える程度という意識で作っています。これが難しいところであり、面白いところです。「主役をいかに引き立てるか」を考えて製造するのが弊社のスタイルです。
(アジの開きを塩漬け中・・・)

3.商品の魅力やこだわり

―なるほど、ありがとうございます。続いて各商品のこだわりや魅力についてお聞かせください。

川本社長:          先々代・先代からの主力商品は干しカレイでした。浜田市はカレイの加工品の出荷量が日本一になったこともあります。
現在、浜田市や弊社の魚はノドグロが目玉となっていますが、以前はカレイが浜田港の主力商品で、加工会社も多くありました。干しカレイの製造方法は、一般的な干物加工業者のように、塩水付けにするのではなく、振り塩をします。塩水漬けと振り塩では振り塩の方が塩の塩梅を均一化することが難しく製造としてはより高度な技量が必要になります。そして塩をすり込ませた後に水洗いをして一晩干しています。夜中に乾燥具合を確認することもあり、非常にこだわりを持って製造しています。この製法は地元ではもう弊社しかやっていないんじゃないかなと思います。
他に16~17種類ほどの魚種を取り扱っていますが、浜田市の看板となっているノドグロやアジもカレイに並んで推しの商品です。アジは上級品の証であるどんちっちブランドに認定されたもののみ使用しています。干し時間としては、ノドグロが2~3時間、アジは1~2時間です。魚の状態を目で確認して干し時間を調整しています。
(どんちっちブランドについて:浜田の水産ブランド“どんちっち”|浜田市 (city.hamada.shimane.jp)

―地元ブランドのどんちっち三魚(ノドグロ、カレイ、アジ)はやはり主力商品となっているんですね。私も浜田の料理屋さんで魚を頂いた際にその三魚が特に美味しいなと思っていました!1日どれくらいの魚を捌くのですか?

川本社長:弊社は通常4人が加工場で仕事をしています。その4人が1日500匹前後ほどの魚を開いています。

―多いっ!1日で120匹以上の魚を捌くなんてすごいですね。

川本社長:  他社さんの中には1日にトン単位で魚を開くところがありますよ(笑)。ただ弊社も年末になると1000匹近く開くことがあります。
(塩漬け後、干すために並べられたアジ)

4.どのような味を目指しているか

―それでは続いて、どのような味を目指しておられるかを教えてください。

川本社長:     昨今は減塩思考というのが広まっているので、薄塩にすることを意識しています。ただあまりに薄すぎると魚の味が際立たないことがあるので味の追求という目標が最も難しいです。お客様からも「辛かった」「薄かった」という様々なご意見をいただきます。今後とも魚の個体差を見極めて塩加減や干し時間などを調整し、お客様から満足していただけるような干物を作りたいと思っています。

―減塩思考などトレンドを把握しながら味の追求を進めていくということですね。

川本社長:     だからといって薄塩にしすぎると美味しくないですからね。「今までと味が変わった」という意見を頂くこともありますし。その辺の塩梅は本当に難しいところです。そうであるからこそ、お客様から「美味しかった」と言われた時は励みになりますし、やってて良かったと感じます。

5.最も達成感を得られたエピソード

―お話を聞くだけでも多くの人に愛される味を出すのは非常に難しいことだと感じました。その中でもやりがいを感じながらお仕事をされていることが、この伝統に繋がっているんだなと思いました!次に、今までで最も達成感を得られたエピソードを教えていただけますか。

川本社長:          祖父は、職人気質で干物づくりは上手かったのですが商売はあまり上手ではなかったんです。そのため祖父の代から事業はずっと債務超過の状態が続いていました。しかし自分が代を継いで12~13年経ったころ(今から7~8年前)に債務超過が無くなりました。これには大きな達成感を得られました。また、代を継いだ当初は「味が変わってしまった」と言われることがありましたが、年数を重ねていくうちに「美味しかった!」という声が増えて嬉しく思います。何が1番の達成感かと言われると一言で伝えるのは難しいですが、ここまで続けられてきたこと、そして今後続けていくことを考えられている「今」を迎えられたのが1番の達成感かもしれません。
(実は『満点★青空レストラン』で取り上げられたことがあります!)

6.最も困難だったエピソード

―2代目の祖父が製造面で成果を挙げ、3代目の父が販路を広げ、4代目の川本社長がその味を継承しつつ財務面で成果を挙げられた。このような素晴らしい会社の歴史をお伺いできて心にグッと来るものがあります。伝統とはこのように作られていくのかと感じました。続いて、最も困難だったエピソードをお願いします!

川本社長:           様々な要因によって水揚げ量が変化し、例年通りに製造ができない時期があったことです。例えばどんちっちあじ一夜干しを販売会社に商品提案をさせていただき商談が成立しました。しかしその年の水揚げ量は例年にない不漁で、ブランド規格を満たすあじが少なかったです。水揚げがされなければ、商品を製造することができません。そしてその解決策を見つけるのは非常に難しいです。結局、ご注文頂いた数量の一部を欠品し先方に頭を下げるしかありませんでした。非常に申し訳ないと思いましたし、辛い経験でした。自然相手では、思いもよらないことが起こるので解決困難だと思いました。

―最近は環境問題が世界的な問題になってきています。そしてここ最近、日本においても異常気象が頻発しています。貴社にとって困難な時期が再来しないことを願うばかりです。

7.オススメの食べ方

―さて、せっかくですから商品の魅力を最大限楽しむためにも、オススメの食べ方について教えてください!

川本社長:       基本はそのまま焼いて食べていただくのが一番だと思います。魚の本来の味が楽しめると思いますので。ただ魚種にごとに考えてみると、カレイは素揚げにしても美味しいです。あと、ノドグロやアジの骨は電子レンジでチンするとパリパリになって美味しいです。また、イカは焼いてもフライにしても美味しいですし、お好み焼きなどに入れるのもオススメです。

8.一言メッセージ

―ありがとうございます!それでは最後に一言メッセージをお願いします。

川本社長:       山陰は海産物や山や畑のもの全部が楽しめる日本有数の地域だと思います。浜田市においてもノドグロやカレイなど美味しい食べ物が沢山あります。この記事を読んでその魅力を発見しに来てくだされば嬉しいですし、弊社の干物を食べていただければ尚嬉しいです。そこで感動していただけるように私も努めていきます。

―取材へのご協力誠にありがとうございました!

【取材を終えて】
まず、干物づくりに真剣に向き合っておられる姿が印象的でした。お客様からの様々な声を製造工程に取り入れ、日々試行錯誤を繰り返されていることが伝わってきました。また、明るい人柄の方で楽しく取材をさせていただくことができました。
実は取材後ノドグロを購入させていただきました。フライパンに酒とみりんを大さじ1杯ずつ入れて中火で調理しました。感想としては、「やっぱり浜田のノドグロは美味い―!!」です。また、先日紹介した日本海酒造様の「のど黒」と一緒に頂きましたが相性抜群でした。これは個人的にオススメです♪

(調理後のノドグロ。脂身たっぷりで本当に美味しかったです。)

是非皆さんも港町「浜田」の伝統の干物をご賞味ください!最後までお付き合いいただきありがとうございました!

(川本社長が『満点☆青空レストラン』に出演した際に撮影した記念写真)

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取材先

取材先画像

有限会社香住屋

住所:〒697-0026 島根県浜田市田町82-3
TEL:0855-22-0666
FAX:0855-23-3845
定休日:火曜日(火曜日が祝祭日の場合は翌日)
MAIL:info@kasumiya.jp
HP:干物造り100年、伝統の技で仕上げた一夜干し 干物海産物通販かすみ屋 (kasumiya.jp)

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