今回取材させていただいたのは、創業74年の「土江本店」さん。玄関に入ると、漬物の匂いがふわっと香ってきました。漬物や海産物を扱っておられますが、中でも目玉商品の津田かぶ漬についてお話を伺ってきました。筆者は取材の中で、津田かぶ漬について知れば知るほど、その奥深さに心を打たれてしまいました...。漬物にロマンなんてあるのかと疑ったそこのあなた!漬物にロマンがあるのかは筆者も知りません。(笑)。でも、津田かぶ漬にはあるんです。
目次
1.津田かぶの特徴
津田かぶを見て、まず、こんなこと思いませんでしたか?
「何この形?」「何この色?」
筆者は初めて見た時、「なすび?」と思ってしまいました~(笑)
-形
ところで、この不思議な形、何かに似ていませんか?
ヒントは、島根県に関係するものです。
正解は、「勾玉」でした!
確かに、下の部分がニョロっと曲がっている感じが勾玉みたい!
ちなみに、全国どこを探しても勾玉のかぶはないそうです。
というよりも、作れない?(詳しくは後ほど)
でも、どうしてこのような形や色になるのでしょう?
その理由は、津田かぶを栽培している環境にあるんだとか...。
津田かぶを栽培している地域一帯は大山(だいせん)(鳥取県)が噴火してできたため、土壌に花崗岩(かこうがん)が多く含まれているそうです。
大山から栽培している地域は約50km離れているのに、噴火の影響があるのですね!どれほど大きな噴火だったのでしょう...。
そんな環境下で育つとあのような形になるそうです。
と、言われましてもどうやってあの形になるのかますます謎になってきましたね(笑)
じ・つ・は、
土の中に植えられた種は下に根を伸ばしていきます。
しかし、花崗岩が含まれている土壌は硬いため、実が上の方に伸びていきます。
実の半分以上が地上に出た状態になります。
ここまでだと、まっすぐの状態で収穫することになりそうですよね。
ところが、なんと、津田かぶの葉っぱは他に比べてとても長いのです!
どのくらい長いのかというと実の5倍以上です。
写真を見ると一目瞭然!
地上に出た実は、葉っぱの重みに耐えられず、押しつぶされてしまいます。
こうして、勾玉の形をした津田かぶができるのです。
関谷社長曰く、他県に種を送ってみたそうですが、全部まっすぐ育っちゃったみたいです。
つまり、この勾玉の形になるのは土壌の環境条件が揃っていないとできないのですね!
土江本店さんでは、なるべくきれいな勾玉の形のかぶから採った種を使うようにしているそうです。
そうすることで、きれいな勾玉の形が受け継がれていくのですね。
島根県の魅力を表す野菜を育てておられる姿にロマンを感じます(Ü)☆
-色
これで形の謎が解けましたね。
でも、まだ色の謎が解けていませんよね?
この鮮やかな紫...
実はこの色、紫紅色(しこうしょく)というそうです。紫じゃないですよ。
表面は紫色に見えますが、水に溶けると紅色が出てくるそうです。
なぜ、このような色になるのかというと...
アルカリ系の土壌がポイントとなります。
硬い土を何とか突き抜けて生えた根が吸収する水は弱アルカリ性です。
この弱アルカリ性の水によって、あの色ができるのです。
津田かぶを栽培している地域は、
宍道湖の淡水と、日本海の塩水が入り混じった性質を持っています。
この色はブルーベリーでおなじみのアントシア二ンだそうです。
でも、アントシアニンにもいろいろあるそうで、津田かぶの色はここでしか出ないみたいです。
2.津田かぶづくりのこだわり
土江本店さんでは、津田かぶ漬づくりの中で様々な工夫をされています!
例えば、紫紅色の成分であるアントシアニンは水溶性なので、雨に当たると色が落ちてしまいます。
そのため、干すときには雨が直接当たらないように、屋根がついているところで干しておられました!
かぶたちの目線で考えると、なんて贅沢な気分♪
他にも、
・種から栽培
・農薬はなるべく使わない
・塩分は控えめ
などなど、安心・安全に食べることを第一に考えておられることが分かりますね~
津田かぶ漬を含めた漬物を製造している漬物工場は、農林水産省の厳しい規格に合格した工場だそうです!
事務所の壁に、その証を発見!
JASマークついてます!
ところで、JASマークについてはどのような意味があるのでしょうか?
日本農林規格等に関する法律(JAS法)に基づくJAS制度は、食品・農林水産品やこれらの取り扱い等の方法などについての規格を(JAS)を国が制定するとともに、JASを満たすことを証するマーク(JASマーク)を、当該等食品・農林水産品や事業者の広告などに表示できる制度です。¹
このマーク、昔は金色だったそうです!
色が落ちるほど認定されてから月日がたっているのですね!
3.津田かぶの歴史
津田かぶという名前が誕生したのは、今から約370年前の江戸時代。
松江藩主松平直正の時代です。
この松平さんが松江の地に来て、初めて津田かぶを見た時に、
「ご縁の国に来て、勾玉の形だし、これは神の贈り物だ。」
というようなことを言い、津田かぶの栽培が推奨されたそうです。
一斉にみんなが作りはじめた地域が津田村だったため、津田かぶと言われるようになったとさ。
♪チャンチャン♪
ちょっと待って、松平さんが来てから津田かぶという呼び方をしてたのなら、もともとなんて呼んどったの?(急な方言、失礼します。)
そんな疑問を抱いた方、するどいですね~
実は、津田かぶはもともと「赤かぶ」という名前でした。
驚きなのが、日本書記(「正倉院文書」)に出てきたということです!
ずいぶんと歴史の長い野菜ですね~
出雲歴史博物館には、奈良時代の生活の様子を表した展示品コーナーに、赤かぶがあります!
筆者も小学生と高校生の時に訪れたことがあるのですが、忠実な再現に圧倒され、全く気づきませんでした。(笑)
4.イチオシの食べ方
関谷社長がマスク越しでも分かるほどの満面の笑みでこう教えてくれました。
「あっつあつのご飯と一緒に食べるのが一番!」と。
あっつあつのご飯、ここがポイントです。
食感は柔らかく、甘みがあるのが特徴だそうです。
食べるときは、見た目・味・食感に注目してみてください!
津田かぶ漬、食べてみたくなりませんか?
買いたい方は、時期に注意です!
津田かぶ漬は、11月下旬~1月ごろまでの期間限定商品なんです!
これも、津田かぶが一番おいしい時期を考えてのことだそうです。
津田かぶ漬を作る工程で、干す工程がありますが、それには30~50日かかります。
11下旬からの販売に合わせて、10月ごろには収穫しなければなりません。
この時期、普通は「神無月」と言いますが、
島根県出雲地方では「神在月(かみありづき)」と呼びます。
全国の八百万の神々が出雲の国に集まってくることからその名がつけられました。
このような背景があるので、土江本店さんでは、津田かぶ漬を
「神在月の贈り物」
と呼んでいるそうです。
誰かに贈り物をするときは、この言い方をすると、そこから話が広がりそうですね。
「味にポイントが出る。」と関谷社長も話しておられました!
つまり、神在月のエピソードを知ると味に深みが出るということですね。
5.最後に...
関谷社長に今後の展望についてお聞きしたところ、
「(津田かぶを)ブランド化したい。」
とおっしゃいました。
ブランド化についての言葉にロマンを感じたので、そのまま使います。
「見た時、読んだ時(商品に添付されているパンフレット)に知らない国のイメージが湧いてくるでしょ。その土地の歴史というものに興味がわくのかということ。歴史というよりかはなりたち。」
これがブランド化だそうです。
つまり、津田かぶの成り立ちからその土地へも興味がわくようになるということですね。
津田かぶ一つにこんなにも色々なことが詰まっているなんて思ってもいませんでした...
また、一つ新たなご縁が生まれたことに感謝致します。
今回、取材させていただいた土江本店様、ありがとうございました!!!
皆さんにも素敵なご縁がありますように(Ü)
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島根県松江市矢田町250番地41
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FAX:(0852)21-3319
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