創業百十余年!老舗のお茶屋「桃翠園」<br>その歴史と自社生産の出雲抹茶の魅力を伝えたい
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2022/02/08 Tue

創業百十余年!老舗のお茶屋「桃翠園」
その歴史と自社生産の出雲抹茶の魅力を伝えたい

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こんにちは。本記事担当の錦織(ニシコオリ)です。
今回、島根県出雲市上直江にある、「桃翠園(トウスイエン)」へ訪れ、岡大樹さんにお話を伺ってきました。日本国内で緑茶の製造・販売をはじめとした事業を展開されて創業百十余年の歴史を持っています。出雲抹茶を広めようと、話題になったスイーツや、海外で人気のタピオカ店とコラボした商品展開といった、新しい試みに挑戦し続けています。そんな桃翠園の魅力を存分に読んでください!

目次

1.桃翠園とは

桃翠園は創業百十余年の歴史を持つ、日本国内で緑茶の製造・販売をはじめとした島根県内の茶業を営む会社です。
出雲と松江をつなぐ国道9号線から一本入った道沿いに立っている、この赤い看板が目印です!

松江方面から車でお越しなら、「café國次郎」の看板が目印になります。

今回、インタビューはこちらへお邪魔し、桃翠園店主の岡さんにお時間をいただき、桃翠園の歩みと緑茶の栽培・加工、そして抹茶専門店が行っている新しい試みについて詳しくお話を伺いました。ぜひ最後までお読みください!

桃翠園店主 岡さん

余談ですが、インタビューがはじまる際に、煎茶をいただきました。私自身が産学インターンで取材へ訪れたのは初めてであり、とても緊張していましたが、一口飲むと、そのすっきりとした味わいと温かさで緊張もほぐれました。

2.桃翠園の歩み

2-1.「桃翠園」という名前の由来について ~桃農家から茶業への転身~

現在では、お茶を主に取り扱っている桃翠園ですが、
お店の名前に「桃」という文字が入っているのか?…
読者の皆さん、気になりませんでしたか。

どうして「桃翠園」には「桃」という文字が含まれているのでしょうか?

名前に「桃」が残っているのは、茶業を始める以前に桃農家を営んでいたというのが理由です。その影響でお茶屋さんに転身した後も、「桃」という文字が名前に残っています!
明治40年前後に、桃翠園の初代に庄屋さんが助言をし、茶業へ転身することを決めたそうです。

なるほど!だから「桃」という文字が含まれているのですね!
古くからこの地元と深くかかわりを持ち続けてきたことを感じるエピソードですね。

2-2.桃翠園の「茶師」について

(イラスト:錦織)

もう一つ、桃翠園のあゆみ欠かせないエピソードが「茶師」というお仕事です。私自身初めて聞き、興味深いお話をたくさん伺いました。

「茶師」とはどのような職業なのでしょうか?

茶師とは、茶業をしている会社ではとても重要な人物です。茶師は、熱湯によって染み出した数種類のお茶を飲み、それぞれのわずかな味や香りの違いを経験から判断し、茶葉のブレンドや焙煎をどうしたらいいか、を考えます。お茶屋さんの茶葉は畑で育てている、数種類の茶葉をブレンドして、その「お店らしい」お茶の味を作ります。茶葉をどのようにブレンドしたら「桃翠園らしいお茶」になるのかを頭の中で組み立てるんです。10以上ある茶葉の品種と、その年の気候や収穫時期によって茶葉の味は変わってくるので、茶師はその時々で組み合わせを考えます。そのため、お客さまが一度、「●●屋さんの●●ブランドの茶葉が美味しい」となってもらえば長い間、ずっと飲み続けていただけるんです。

なるほど…!桃翠園専属の茶師さんなくして、桃翠園のお茶はできないということですね。
とても重要な職業だとわかりました。
桃翠園には現在、何名の茶師がいますか?

桃翠園には現在、茶師歴30年の方を含めて3名いますよ。

そうなのですね!
茶師の技術はどのように習得するんでしょうか?

茶師の技術というのは、「香り、味」といった風味を表す感覚に基づいたものです。「味」というのは、少し難しく言うと「滋味」といいます。そのような感覚的なものなので、マニュアルのようなものをつくり、代々継承していくという方法はとりにくいです。だからこそ、「人から人へ」伝えていく方法で行っています。後継者は先代と一緒に同じお茶を飲むことで経験を積みます。後継者はそこでこれまでとは違う風味を感じたら、それは「こういうものだ」と先代に教わる。その繰り返しです。たくさんのお茶を飲み、経験値を増やして覚えていくしかないのです。

お茶屋さんにとって「茶師」という仕事は本当に大きな存在だとわかりました。百十余年の間、受け継がれてきた桃翠園のお茶の味をこれから先も人から人へ伝えられ、残ってほしいなと思いました。

【ここで一息『おいしいお茶の入れ方』】

通常お茶を美味しくいただくには、お湯を約80℃くらいで淹れます。
茶師の皆さんの目的は、お茶の悪い部分を技術で感じにくくさせることで、お客様に美味しいお茶を飲んでもらうことです。そのためには、ふつふつと沸いてすぐの熱湯よりも、約80℃位のお湯で淹れると、茶師の皆さんが提供したい美味しいお茶になるそうです。
また、お茶屋さんの茶葉は畑で育てている、数種類の茶葉を「ブレンド」という形で組み合わせて、その「お店らしい」お茶の味を作っています。桃翠園専属の茶師さんなくして、桃翠園のお茶はできないということですね 。公式サイトにも美味しいお茶の淹れ方についての記事がありますので、ぜひ参考にしてみてください。
▼桃翠園「おいしいお茶を淹れるには」
美味しい飲み方 | 桃翆園 (tousuien.jp)

3.桃翠園のこだわり

3-1.茶葉の栽培について

(画像:桃翠園公式HP、イラスト:錦織)

桃翠園では、15ヘクタール(東京ドーム3.2個分)の広さで10以上の品種の茶葉を育てています。創業した明治40年から、茶摘み・茶もみ・茶葉の乾燥などのすべての工程を手作業で行っていました。茶もみとは、摘んできた茶葉を蒸したあと、手で5時間以上かけてもんで、ほぐしてなどを繰り返す工程です。大正時代初期に入り、少しずつ機械の導入が始まり、ここ数年では茶葉のデータをとり、気候と茶葉の成長を管理しながら、栽培を行っているそうです。

旬のお茶が取れるのは年に3回ほど。それ以外の時期も、草刈り、肥料まき、新芽が機械でうまく摘めるように整えてあげるといった作業が年中あります。
茶摘みは新芽のみを収穫する必要があり、この作業を機械で行うため、きれいに収穫できるように傾きを整えるそうです。年によっては、雪の影響などの外的要因により、茶葉の枝がうなだれてしまうこともあるそうです。そうなると綺麗に収穫されないため、人の目と手で一つずつ元あるべき場所へ戻してあげるそうです。人が様子を見やすいように、茶園の木は1m前後の高さに揃えているそうです。実はそのまま放っておくと、人の背を乗り越えて2m以上も育つような植物だそうですよ。

茶園というと人の腰くらいの高さの木が、きれいにもこもこと整えられているイメージしかなかったので、そんなに高く成長できる木だということを知らなかったです!

夏場は雨が自然に降るのを待ち、どうしても水分を与えることが必要であれば水まきを行います。畑が水はけの悪い状態になると、「根腐れ」を起こすので、程よく保水する畑に茶園を保つようにする必要があるそうです。美味しい茶葉が成長するよう、年中通して茶園のお世話がとても忙しいそうです。

3-2.茶摘みとお茶シーズン

(茶摘みの様子、画像:桃翠園公式HP 出雲精茶 | 桃翆園 (tousuien.jp)

(茶摘みの様子、画像:桃翠園公式HP 出雲精茶 | 桃翆園 (tousuien.jp)

茶摘みについて教えてください!

はい!桃翠園のお茶の旬は五月で、新茶の時期とも言われます。この茶摘みでは、成長した茶葉の一番先頭にある葉を摘み取ります。
一番茶ができる五月、二番茶ができる六月頃、そして九~十月の秋ごろにできるお茶を三番茶と呼びます。それぞれの価格の相場は、一番茶が4000円/kgで三番茶が1000円/kg。キロ当たり3000円ほどの差があるんです。
所有している茶園一面の茶葉を摘むには、一ヶ月半ほどかかるそうです。茶葉には成長の早い「早生(わせ)」という茶葉と、成長がゆっくりである「晩生(ばんせい)」の二種類があり、すべての茶葉を一番おいしいときに摘むために、畑の中のどこから作業するのかを日々、考えています。

収穫時期によって差がこんなにもあることに驚きです!
おいしいものを届けたいという岡さんの思いが強く伝わってきます。

このようにして摘まれた茶葉の新鮮さを保つため、茶摘みされた茶葉はその日のうちに加工する必要があるそうです。機械が導入されて「生産時間短縮&生産量爆上がり」と思いきや、そうでもないようです。実は、今も昔も茶葉を摘んでから製茶に掛かる時間は、手揉みでも機械揉みでも特に変化がないそうで…!
一度に加工できる茶葉の量は、手作業の部分を機械化したことでかなり増えましたが、茶葉の加工にかける時間というのには変化はなく、同じ時間だけ、茶もみなどの工程は時間を割く必要があるそうです。茶摘み時期の一日の大まかな流れは、朝十時ごろには摘み始め、摘み終わった茶葉から随時、加工します。そして最後に摘まれた茶葉を加工し終わるのが翌朝の四時になることもあるそうです。加工に使われる、詳しい設備などはこちらで紹介されています。
▼桃翠園「工場・設備」
茶園から茶の間へ | 桃翆園 (tousuien.jp)

このような苦労があり、おいしいお茶ができているのだなと感じました。

出雲抹茶はこのようにできています。

(イラスト:錦織)

4.桃翠園の新しい取り組み

4-1.出雲抹茶について

桃翠園のこだわりや苦労からおいしいお茶ができていることがとてもわかりました。
ありがとうございます!
そして桃翠園では、他ではみられない新しい試みに挑戦されていますよね。
その一つに「抹茶」があると伺いましたが、どうして「抹茶」なのでしょうか?

抹茶の製造は、創業百年の記念事業としてスタートしたのがきっかけですね。
抹茶の製造を中四国で初めてスタートしました。

そうだったのですね!初めてとはすごいです。
抹茶に着目したのにはどういった理由があったのでしょうか?

れはですね、松江は、全国的に見ても抹茶の個人あたりの消費量が全国トップクラスなことが有名ですよね。(参考:島根県茶業及びお茶の文化の振興に関する指針)
しかし、島根県は当時、抹茶の製造がされておらず、皆さんが飲んでいる抹茶は全て京都の宇治で作られたものでした。あまりにもよく飲むので、当時の方々は島根県内のお抹茶だと思っていたでしょう。
そんな背景があり、「個人あたりの抹茶消費量トップクラスのこの地域で、地元の抹茶ブランドがないのはさみしい」と考え、桃翠園の創業百周年記念事業としてこの事業を始めることになりました。
桃翠園が「出雲抹茶」として中四国ではじめて抹茶の製造を始めたので、抹茶用の茶葉栽培の最初はとても苦労が多かったです(笑)最初の頃は、京都宇治のお茶屋さんに助言を求めつつ、出雲の風土に合わせた栽培方法を模索しながらのスタートでした。

不昧公の時代から島根県内では、抹茶が盛んに飲まれていると聞いていたので抹茶の製造がないことに驚きました!
近くに抹茶事業に携わる人がいなかったことで、多くの苦労があったのではないでしょうか?

そうですね(笑)
抹茶事業がスタートした当初、私は新入社員でした。当時、社長に抹茶用の茶園を作ること、そして43万本の苗を手作業で植えることを伝えられました。それを聞いて私は、とても驚いたことが今でも印象に残っています。43万本もある苗を手作業で一本一本植えていきましたが、思うように雨が降らず、当時の新入社員三人で雨乞いをしたなんてこともありましたね…(笑)雨乞いのあと、願い届いてか大雨が降り、もう完成!というところまで行った茶園の苗が全て流れてしまったこともありました。

そんなことが!大変でしたね…

(イラスト:錦織 抹茶用の茶園で雨乞いをしたエピソード)

抹茶の濃い緑色を作るには、茶葉から日光を遮断するために箱型の「棚ひふく」で黒い布を使って360°茶葉をすっぽり覆う必要があります。光合成を抑えることで葉の緑色成分である、葉緑素を中に閉じ込めるんです。そうですね…(笑)そこから再度苗を植えなおして、三年経ってやっと抹茶用の茶畑が完成しました。

なるほど…!出雲の地で美味しい抹茶を生産するべく、桃翠園の社員の皆さんが膨大な時間と研究を積み重ねたのだとわかりました。先駆者となるのはどんな場合もかなりの苦労が必要だと思うので、それを諦めずに続けてこられた熱量に感動しました。

4-2.「出雲抹茶」スイーツ

カフェ國次郎の店内には商品がずらりと並んでいて、購入することができます!「出雲抹茶」を他の抹茶と差別化し、「桃翠園」の知名度をあげるために、スイーツなどの商品を展開しています。その中でも大注目のスイーツは、「出雲抹茶ショコラテリーヌ」です。

店頭販売も充実の品ぞろえ

桃翠園の出雲抹茶ショコラテリーヌ オンラインストア・店頭で販売中!

この抹茶テリーヌは、私の弟の幼馴染のパティシエさんが弟の結婚式で最後のデザートとして出してくれたことがきっかけで生まれた商品です。抹茶テリーヌは、フランス料理のテリーヌを作る際に使用する「テリーヌ型」を使用して作っているスイーツです。お茶屋だからこそできる抹茶の使用量でこの抹茶独自の風味を出しています。ちなみにパティシエの皆さんに「常識をはるかに超えた量の抹茶を使っている」と言われ、材料をかき混ぜるミキサーが壊れるほどだそうで…(笑)!

弟さんの結婚式で出たアイデアから始まって、現在はこんなにも人気商品に。
これだけ抹茶をぜいたくに使っているスイーツは、お茶屋さんだからできることなんだと思いました。
お茶屋さんの本気すごいです。
出雲抹茶ショコラテリーヌはどんな味なのか、ますます気になりました。
コロナ禍で「直接買いに・渡しに行けなくてもギフトを贈りたい。」という方たちから続々と利用していただいているそうです。販売は、店頭・ECサイトで行っています。下記のサイトURLからアクセスしてみてください~!

▼桃翠園ECサイト
【公式】出雲抹茶専門店桃翠園|抹茶スイーツおとりよせ通販専門店 (izumo-matcha.com)

4-3.海外ではスーパーフード!?桃翠園の「出雲抹茶」の海外進出

出雲抹茶を使ったタピオカドリンクが国境を越えて人気だと聞きました!

そうなんです!
現在、お茶の古い歴史がある台湾をはじめとして、カナダ、上海、オーストラリアへ出雲抹茶が広まっているそうです。なかでも台湾はお茶を本当によく飲む国民性で、台湾国内に200店舗ある「milk shop」で出雲抹茶を使ったタピオカドリンクが販売されているそうです!国境を越えて、「桃翠園」という名前を広めていますね。
Milksha公式サイト(台湾)のSignature Menuとして「桃翠園」の抹茶を使用して、と掲載されています。Instagramでも掲載されていました。https://www.instagram.com/p/CHhh1xBgAKe/

本当ですね!どうして抹茶が「スーパーフード」と言われているのでしょうか…?

それはですね、抹茶はビタミンが豊富で、虫歯防止、殺菌、風邪予防、さらにはダイエット効果まで期待できると言われているんです。日本人は日常的にお茶を飲みますが、このお茶文化が近年、海外から注目されているので、どんどん広めていきたいと思っています。

なるほど!日本の文化を広める役割も桃翠園は担っているのですね!

そうですね…!
また、桃翠園は減農薬栽培を行っており、さらに一社で茶葉の栽培から加工を行っています。海外では、輸入品に対して厳しい基準があるため、商品を海外へ販売することはとても難しいです。しかし、桃翠園の「出雲抹茶」を始めとする茶製品は、なるべく農薬を使わず育てる方法を取り入れているため、海外の厳しい輸入基準をクリアしやすいという利点がありました。そういった背景から台湾をはじめとする、日本国外にも出雲抹茶を広めることができます。農薬や化学肥料の使用を抑え、環境に優しい農業生産を行っているとして、品質・安全を保障している、島根県エコロジー農産加工食品、有機JAS認定工場にもそれぞれ認定されています。

5.おわりに

最後に、国内外のお茶文化を知っている人、まだ知らない人へ。岡さんが伝えたいメッセージをお願いします!

そうですね。「日本のお茶文化」を知っている人もまだ知らない人も、お茶というのはこだわるとかなり楽しい文化なんだということを知ってほしいなと思います。そして忙しい日々の中、五分でもお茶を淹れて飲む時間を作っていただきたいです。人生の中で「ほっと一息」つく、そういう時間はとても大事だと思っています。そのほっとするひとときに桃翠園のお茶がお供して、お客様が少しでもリラックスできたり、ゆとりのある人生を過ごせたり、ということに貢献出来たらと感じます。これからも皆さんの豊かな生活に役立てるように頑張っていきたいです!

「ゆとりのある人生」という言葉がとても素敵な響きだと感じました。私は春から大学院へ進学して、またさらに忙しくなると思いますが、岡さんの気持ちを忘れず、お茶を飲んで一息つく時間を大事にしたいなあと感じました。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。新しいことに挑戦し続ける会社であり、山陰地方を盛り上げ、知名度を高めてくれるような魅力のある会社さんだと感じました。また、お茶の栽培方法についてなど、初めて聞くことばかりで、とても興味深かったです。

取材のご協力、ありがとうございました!

出典:
■島根県茶業及びお茶の文化の振興に関する指針,島根県,P.14
chashishin.pdf (shimane.lg.jp)

■お茶の効果,Japan Tea Action
Japan Tea Action

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取材先

取材先画像

桃翠園

所在地: 〒699-0624 島根県出雲市斐川町上直江1482
電話: 0120-723-908
店頭販売あり
Café國次郎2020年6月より休業中(2021/3月現在)
会社公式サイト:【出雲茶・出雲抹茶】出雲のお茶のお取り寄せ通販専門サイト桃翠園 (tousuien.jp)
オンラインストア:【公式】出雲抹茶専門店桃翠園|抹茶スイーツおとりよせ通販専門店 (izumo-matcha.com)

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