風流堂と”和菓子”
お菓子

2021/04/22 Thu

風流堂と”和菓子”

Twitter Facebook

島根県松江市は京都、金沢と並び「日本三大和菓子処」として知られています。そんな松江の地に、明治時代から日本の伝統的な味と技を守り続けている和菓子屋「風流堂」があります。明治時代から続く伝統を守りながら、時代に合わせて変化をさせる難しさと和菓子の魅力を風流堂の代表取締役 内藤様に伺ってきました。本記事を読んでくださった方々が日本の伝統である和菓子に少しでも興味を持って下されば幸いです。

目次

和菓子の魅力

お菓子と聞くと何をイメージされますか?
ケーキやクッキー、チョコレートなど洋菓子をイメージされる方が多いかと思います。
しかし、今回内藤様のお話を伺い、日本に古くから伝わる伝統的な和菓子を忘れてほしくないと強く感じました。
私たちの先祖が創作を重ね、令和の時代になっても伝わり続けてきた和菓子の魅力とはいったいなんなのでしょうか?
和菓子はその見た目と味で季節を表現します。春は桜、夏は紫陽花、秋は紅葉、冬は柚子。四季折々の姿で私たちを楽しませてくれます。また、たくさんの種類がある和菓子ですが、その一つ一つにはそれぞれ伝統が息づいており、これまでの長い歴史の中で受け継いできた風情や情緒が職人の手によって込められているのです。
遠い昔から脈々と受け継がれてきた物語が和菓子に乗って私たちに伝わりました。
現代に生きる私たちが味わうことでその物語はさらに未来へ繋がります。
和菓子を通じて先人の想いに触れながら和菓子の味を楽しむのも趣があるのではないでしょうか?

風流堂の”和菓子”

-秋の味覚、栗を使った「呼子鳥(よぶこどり)」-

最初に紹介する和菓子は、秋限定の「呼子鳥」です。
秋を感じさせる紅葉の刻印と、うずくまる鹿をイメージした見た目となっています。
ちなみに「呼子鳥」というのは万葉集によく出てくる鳥の名前です。
一般的にはカッコウのことだと言われていますが正確にはわかっていません。
確かなことは「呼子鳥」は春の季語であるということです。
「秋」なのに「呼子鳥」
「呼子鳥」なのに「鹿」
その命名や由来には様々な説がありますが明らかにはなっていません。
それもまた長い年月をかけて作り上げてられてきた和菓子ならではなのでしょう。
栗きんとんと小豆を使用した餡を薄皮で包んだ和菓子です。
皮むき餡なので色も薄く、主張も強くありません。
そのため非常に上品で繊細な味わいとなっています。
栗好きの方はもちろんですが、
古き良き伝統を感じたい方も是非手に取ってみてください。
※呼子鳥は11月20日までの秋季限定商品

-人気No.1  「朝汐(あさしお)」-

次に紹介するのは風流堂を代表する「朝汐」です。
北西の風によって日本海の大波が岩肌に打ち付けられ、白い泡となって消えていく景色をモチーフにして作られました。
「朝汐」は100年以上も前から作られ続けており、松江の代表銘菓として広く親しまれています。
一見すると普通の上用饅頭※1 のようですが、
職人のこだわりが詰まった饅頭です。
餡は丁寧に皮をむいた皮むき餡で、
炊きあがった餡に粒豆を足し、景色を作っています。
粒豆が皮からうっすらと見える様は、まさに日本海の波のような風情があります。
婚礼の引き出物やお祝い事など、贈答用に用いられることの多い「朝汐」。
大切な人への想いを込めて、ぜひ贈り物にしてはいかがでしょうか?

詳細はこちら
https://www.furyudo.jp/pickup-meika/6


※1 上用饅頭(じょうようまんじゅう)
薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)ともいう。
すりつぶした芋の皮で餡を包み蒸し上げたシンプルな饅頭。

-日本三大銘菓 「山川(やまかわ)」-

茶人として名高い 松江藩 第7代藩主・松平治郷(不昧公)が考案した和菓子です。
「山川」の由来は不昧公が詠んだ歌にあります。
“散るは浮き、散らぬは沈む紅葉の、影は高尾の山川の水”
この歌にあるように「山川」の赤は紅葉の山を、白は川を表現しています。
実は一時期作られなくなった「山川」ですが
大正時代に風流堂の2代目当主が復活させました。
そしてこの「山川」が誰にでも作れるように、その技術を他の和菓子屋にも広く伝えたそうです。
自然の景色に直線はないということから、
手で割って食べて欲しいという風流堂の想いも込められています。
寒梅粉※2・上白糖・塩のみを使ったシンプルながら味わい深い和菓子です。
決して日持ちするものではないのでお土産にされる際はお気を付けください。

詳細はこちら
https://www.furyudo.jp/pickup-meika/5

※2 もち米を蒸して餅状にし、薄く延ばして焼いたものを細かく砕いたもの。
粒子が非常に小さく、なめらかできめ細かいのが特徴。

これまで紹介してきた和菓子以外にも、風流堂にはたくさんの和菓子があります。
春先の、草の上に積もった雪が溶けていく様を表現した「路芝」(みちしば)や伝説の昭和菓子パン「シベリア」を和菓子風にアレンジしたものなど、伝統的な和菓子から現代的な和菓子など様々な商品を製造・販売されています。松江に、そして風流堂に訪れて、様々な和菓子の数々をご覧いただきたいのですが遠方の方やご多忙の方のためにオンラインショップもございます。ぜひアクセスしてみてください。そして日本の伝統的な和菓子を、そして先人たちの想いを感じてください。

https://www.furyudo.jp

風流堂の想い

明治時代から続く伝統あるお店でさえ、大きな時代の変化には抗うことができません。
試行錯誤を繰り返し、伝統を崩すことなく時代の変化に合わせなければなりません。
風流堂は現在、地元の商品とのコラボ企画を進めており注目を集めています。
「コーヒー朝汐」が代表的な例です。
松江市の珈琲店「IMAGINE.COFFEEさん」とのコラボ商品で、コーヒー豆と餡の相性が抜群です。
新しさもありながら、伝統も感じさせる一品となっています。
他にも安来市のイチゴを使った「琥珀餡」など、コラボ商品は数多くあります。
地元の食材を使って、地元の方々と共に商品を作り、全国へ届ける。
これは昔から変わることのない「風流堂の想い」なのだろうと感じました。

和菓子の伝統や由来など、知れば知るほど楽しくなってきませんか?
本記事で紹介した風流堂の和菓子や、物語はほんの一部です。
詳しく知りたくなった方も、少しだけ興味が湧いた人も、お腹がすいてきた人もぜひ風流堂の和菓子を味わってください。
そしてその物語を一緒に紡いでいってください。

風流堂 寺町本店前にて (左 : 山本様 , 右側: 内藤様)

この記事をいいね!する

取材先

取材先画像

風流堂

本店
島根県松江市寺町151
TEL:0852-21-3241
定休日:1月1日/毎月第1日曜日(時季によって変更の場合あり。変更の際はホームページの「お知らせ」欄にて前もってお知らせ致します。(一週間前までに))
営業時間:9時〜18時
https://www.furyudo.jp/

瀧宮暢斗 の書いた記事一覧